すっごい箱を開けてみたら、そこには薄黄色の平ぺったい棒みたいなのがすっごくいっぱい入ってたんだ。
でもね、僕はそれが何なのか、見ただけじゃ全然解んなかったんだよね。
だから中から一本取り出してみたんだけど、すっごく軽かったもんだから余計に解んなくなっちゃったんだ。
だってさ、すっごく軽いけど触った感じ、結構堅かったんだもん。
だから僕、お母さんに聞いてみる事にしたんだ。
「これ、何に使うもんなんだろう? お母さん、知ってる?」
「これはまた、凄くめずらしいものが入ってたのね」
そしたらね、僕の持ってる平ぺったい棒を見たお母さんは、ちょっとびっくりしたような声で珍しいものが入ってるねって。
でね、その時丁度次のお酒の樽を獲りに来てたお父さんがそれに気がついて、なになに? って僕たちの方に来たんだ。
「ん? どうしたんだ?」
「ほら、見てよハンス。乾燥させたフィートチーネが入っていたわ」
「おお、フィートチーネか。それは確かに珍しいものが入っていたな」
これはどうやらフィートチーネって言うお名前のものみたいで、これが何なのか知ってたお父さんとお母さんは箱の中を見ながら、こんなにいっぱいあるなんてすごいねって大喜びしてるんだよ?
でもさ、お名前だけが解ってもこれなのかは全然解んないでしょ?
だから僕、これなあに? ってお母さんにもういっぺん聞いてみたんだ。
「ああ、ごめんなさいね。これは特別な小麦を使って作る食べ物なのよ」
「特別な小麦?」
「ああ。前にイーノックカウで聞いた話によると、かなり硬い品種の小麦で作るものらしいな」
お父さんとお母さんが教えてくれたんだけど、これには普通のよりも硬い小麦を荒く挽いた粉を使って作ってあるんだって。
それを聞いた僕は、だからこんなに硬いのかぁって思ったんだよ?
でもね、それを言ったらお母さんは笑いながら、違うよって。
「フィートチーネを知らずにこれを見たら、そう思うのも仕方が無いかもしれないわね」
「これはな、一般的なフィートチーネを長持ちさせるために乾燥させたものなんだ」
僕、この棒は硬いのしか知らないからそういうもんなのかなぁって思ってたんだよ?
でもこれ、本当は乾燥させずにそのまんま食べる物なんだよってお母さんが教えてくれたんだ。
「これは職人が作ったばかりのものを調理して食べる物でね、乾燥させる前はとても柔らかいのよ」
「えー、うそだぁ」
僕はね、かっちんかちんの平ぺったい棒を見て、これが最初は柔らかかったなんて思えなかったんだよ。
でもね、お父さんもお母さんの言ってる事は本当なんだよって言ったもんだから、僕はもしかしたら本当なのかなぁって思い始めたんだ。
あれから貰ってきたお土産を全部見たんだけど、あの平ぺったい棒よりも珍しいものはなかったんだよね。
だから僕、お母さんに頼んでどうやって食べるのかを教えてもらう事にしたんだ。
「これはね、結構手間のかかるものだから、お店で食べると結構な値段がするのよ」
「そうなの?」
「ええ。特別な小麦粉を使っているというのもあるんだけど、生地を練ってから延ばしたり、それを同じ太さにそろえて切るのにはかなりの技術がいるそうなの。だから専門のお店でしか食べられない、珍しい料理なのよ」
見ただけだとただの棒なんだけど、作るのには職人さんの技術がいるんだって。
だからこんな風に乾燥させたやつだけじゃなくって、普通のもすっごく高いんだよってお母さんは教えてくれたんだ。
「フィートチーネは作れる人が少なくて、食べられるお店はイーノックカウでも本当に少ないのよ」
「そもそも作れる職人自体、領主が遠くから連れてきた職人しかいないって話だからな」
このフィートチーネってのはね、生地を練るのもそうだけど、それを伸ばしておんなじ厚さや幅に切るのがすっごく難しいんだって。
だからこれを出してる料理屋さんは、お父さんやお母さんでもそんなにいっぱい行った事が無いんだってさ。
「俺も生のフィートチーネは食べた事があるが、乾燥させたものはあまり手に入らないからなぁ。あの爺さん、かなりはり込んだんじゃないか?」
「ええ、そうでしょうね。でもこれでいつでもフィートチーネが楽しめるわ」
これがどんなお料理になるのか解んないけど、お母さんはフィートチーネってのが大好きらしくって、この平ぺったい棒を見ながらフフフって笑ったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
今回ですが、用事があったせいで書く時間が取れずいつもよりもかなり短くなってしまいました。
なので後書きで書く予定だったネタバレも、解る人には解っているでしょうけど書けない状況に。
本当に申し訳ありません。